はじめに まちの情報は、役所や国のデータにバラバラに眠っています。それらを一枚の地図に重ね、「どこに、何が、どれだけあるのか」がひと目で分かるようにする。それが三島アトラスです。勘や印象ではなく、数字で、まちの現在地を見る。本稿では、この地図を自治体がどう使えるのかをご紹介します。
何が見えるようになるか
この地図には、現在4種類の情報が重ねられています。いずれも、国が公開しているオープンデータです。
どこに人が住み、どこで減っていくのか。町丁目ごとの人口・世帯・高齢化率が分かります。国勢調査に基づく実測値です。
どの建物が古いのか。建物を一棟ずつ、建てられた年で色分けしています。1981年(新耐震基準)より前の建物がどこに集まっているのか、ひと目で分かります。
どこが水に浸かり、どこが崩れやすいのか。洪水浸水想定(規模別)と土砂災害警戒区域を表示します。国・県が定めた公式の想定です。
人が実際にどう動いているのか。昼と夜とで、どこに人がいるのかが分かります。携帯電話の統計に基づく推計です。
ほかの地図と、何が違うのか
国や自治体にも、地図でデータを見せる仕組みはあります。ただ、その多くは「1種類ずつしか見られない」「重ねられない」ものです。
このシステムでは、複数の情報を同じ土台の上に重ね、掛け合わせて考えることができます。データを差し替えれば自動で最新の状態になり、他の市町へも同じ形で展開できます。
数字を「溶かさない」という約束
実際に数えた事実、公式の想定、統計からの推計。この3つは、性質がまったく異なります。一つの数字に混ぜてしまえば、根拠を説明できなくなります。
だから、この地図は3つを色と模様で区別して見せ、決して混ぜません。
- 実測・全数(人口・建物・標高)── ベタ塗り
- 公式の想定(浸水・土砂災害)── 斜線・規模を明記
- 推計(人の動き)── 薄い色
決めるのは、人です。私たちは判断の前に、材料を正直に並べます。「ここは、まだ測られていません」ということも、隠さずに示します。
実例:三島市中心部 浸水想定(想定最大規模)× 高齢化率。大場川に近い低地(斜線=浸水想定)に、高齢化の進む街区が重なる。「守るべき場所」が数字で浮かぶ。
使える場面
自治体にとって、この地図が力を発揮するのは「どこから手をつけるか」を決める場面です。予算には限りがあり、決めるということは、順番を決めることにほかならないからです。
防災。避難計画や水害対策に。要支援者の分布と浸水想定を重ねれば、誰から先に声をかけるべきかが見えてきます。
老朽インフラ。古い建物や設備がどこに集中しているのかが分かり、更新の優先順位を数字で説明できます。
空き家・まちづくり。人口が減っていく地区、古い建物の多い地区を、面として捉えられます。
公共施設の再配置。いまどこに人がいて、20年後にはどう変わるのか。統廃合や新設の根拠になります。
市のデータが加われば、もっと深くなる
この地図は、国のオープンデータだけで作られています。各自治体が非公開で管理しているデータは、一切使用していません。
裏を返せば、市がお持ちのデータ(下水道台帳の施工年度、地盤高、固定資産の集計値など)を同じ地図の上に載せれば、さらに詳しい分析が可能になります。市の中に眠っているデータを、意思決定の材料に変える。それが次の段階です。
使用データ(すべて公的なオープンデータ):国勢調査(総務省統計局)/3D都市モデル PLATEAU(国土交通省)/数値標高モデル・地理院タイル(国土地理院)/指定文化財・災害情報(国土数値情報, 国土交通省)/人流オープンデータ(国土交通省)。
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五十嵐こと|Z-AI株式会社(静岡県長泉町)
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